Rider 2025.3 の新機能

Rider 2025.3 は拡張メンバー、拡張演算子、ユーザー定義の複合代入演算子などの C# 14 の機能を含む .NET 10 の同日サポートに加えて、コンパイラーの最新の変更に合わせた更新を提供します。 また、このリリースでは Unity、Unreal Engine、および Godot ゲーム開発のサポートを拡大し、Islands テーマを JetBrains IDE の新しいデフォルトの外観に設定し、ソリューションの起動パフォーマンスを改善しています。

主な更新内容

.NET 10 SDK の同日サポート

最新バージョンの Rider には以下の内容が含まれています。

  • 新しい SDK のプロジェクトテンプレートのサポート。
  • 新しい SDK をターゲットにしたプロジェクトを作成、実行、デバッグする機能。
  • 既存の言語機能に対する強化を含む包括的な C# 14 のサポート。

Rider 2025.3 における C# 14 のサポートに関する詳細は、こちらをクリックしてください。

新しいデフォルトの UI テーマ: Islands

JetBrains Rider のデフォルトの外観を Islands テーマにしました。 2025 年前半に初めて導入された Islands はダークモードとライトモードを提供し、エディターウィンドウとツールウィンドウを明確に見分けやすくするほか、タブの視認性を改善し、新鮮でモダンな雰囲気を提供します。

パフォーマンス改善と起動の最適化

Rider 2025.3 では、起動時のパフォーマンスと全体的な応答性が大幅に改善されています。 複数の内部初期化フェーズが最適化されたため、ソリューション全体の読み込み時間が短縮され、IDE が作業準備をより迅速に完了できるようになりました。

起動時にエディターがちらつかなくなり、コード補完、検索、移動操作などの基本機能を起動プロセスのより早い段階で使用できるようになりました。

このような最適化の対象はゲーム開発にも広がっています。 Unreal Engine プロジェクトを開く時間が短縮され、より少ないメモリでアセットのスキャンとキャッシュ処理を行えるようになっています。 詳細は、ゲーム開発」セクションをご覧ください。

修正内容

Rider 2025.3 では新機能に加えて、安定性の改善と、長らく未解決になっていたユーザーから報告のあった問題の解決に注力しました。

すべての修正内容は、専用の修正内容」ブログ記事をご覧ください。

言語サポート

C# 14 のサポート

Rider 2025.3 では最新の C# 14 言語機能に対する包括的なサポートが導入され、コード解析、リファクタリング、およびエディターの支援機能が全体的に改善されました。

  • 拡張メンバーのメソッド、プロパティ、および演算子が包括的にサポートされるようになりました。
  • ユーザー定義の複合代入演算子がコード解析とコード補完で完全にサポートされるようになりました。
  • field キーワードの動作がコンパイラーの最新の変更に合わせて調整されました。
  • Enumerable.Reverse が span と使用される際の破壊的変更を新しいインスペクションで検出できるようになりました。

コード編集支援

Rider 2025.3 では、新しい Generate try-catch block(try-catch ブロックの生成)コンテキストアクションが導入されました。このアクションを使用すると、メソッド呼び出しの try-catch ブロックが XML ドキュメントに基づいて自動的に生成されるため、宣言された例外をより迅速かつ矛盾なく処理することができます。

Rider と ReSharper における C# 14 の機能のサポートについては、こちらのブログ記事をお読みください。

F# 関連の更新

Change type(型の変更)クイックフィックス

不正な型に関するエラーが表示された際、ローカル値、適用された引数、関数の戻り値の型、共用体のケースフィールド、プロパティなどに対して簡単に修正できるようになりました。 さらに言語を横断して機能するため、F# コードでエラーが発生した場合に C# の宣言を修正できます(その逆も可能です)。

AI サポートの改善

Junie のコンテキスト収集の仕組みを実装し直し、F# コードの解析を大幅に改善しました。

その他の変更

このリリースでは、F# 10 のサポートや各種の改善による F# コンパイラーサービスの更新も行っており、多数のクイックフィックスやコード補完ルールも調整しています。

F# のサポートに関するその他の改善点とバグ修正の詳細については、こちらをご覧ください。

JetBrains AI に関する更新
2025.3.0.4

マルチエージェントエクスペリエンス: Junie と Claude Agent

Claude AgentJetBrains IDE にネイティブ統合された初のサードパーティ AI エージェントです。 このエージェントの追加により、JetBrains は開発ワークフローにさらなる柔軟性と性能をもたらすマルチエージェントエクスペリエンスを提供しています。 Claude Agent と Junie を同じチャットインターフェース内で使用し、タスク単位でエージェント間をシームレスに切り替えることによって適切な支援を得られるようになりました。

任意のエージェントを使用するには AI チャットで直接起動するのが最も簡単ですが、 必要に応じて Junie プラグイン(および一部の専用機能)の形で引き続き Junie を使用することもできます。

IDE 内での明確な AI 利用枠の追跡

AI クレジットの残量、更新日、およびチャージ残高を IDE 内で直接確認できるようになりました。また、クレジットがなくなった場合でも、IDE 内からチャージ手続きを行えます。

このアップデートによって AI リソースの監視と管理がより簡単になり、AI の使用状況の明確さと利便性が向上しました。

Junie では、タスクで 1.2 を超える AI クレジットを使用すると通知されます。 この機能は Junie プラグインで提供中ですが、近日中に AI チャットにも導入される予定です。

AI 利用枠については、こちらのブログ記事をご覧ください。

BYOK(Bring Your Own Key): より高い自由度と管理の実現
近日公開予定

BYOK で独自の API キーを使用することで、JetBrains AI からログアウトせずに OpenAI、Anthropic、または任意の OpenAI API 対応のローカルモデルに接続できるようになりました。 Rider 内での AI の使用方法をより詳細に管理できるようになるため、特定のプロバイダーを使用したい方に最適な新機能です。

この構成は、特に JetBrains AI サブスクリプション(無料利用枠を含む)と組み合わせた場合に威力を発揮します。サブスクリプションを通じて強力な補完機能、追加のモデル、ボーナスクレジットが提供され、それと同時に独自のキーでチャットやエージェントを使用できるためです。 詳細については、こちらのブログ記事をご覧ください。

パフォーマンス監視

Monitoring(監視)ツールでの ASP.NET とデータベースの問題の検出

Rider 2025.3 の Monitoring(監視)ツールウィンドウが進化し、パフォーマンスのインサイトをリアルタイムで提供する単一のハブになりました。 ASP.NET とデータベースの問題を CPU、メモリ、および GC 処理と一緒に検出することができます。 Rider はアプリの実行中やデバッグ中に処理の遅いクエリ、時間のかかる MVC アクション、および過剰なデータベース接続を自動的にハイライトします。

詳細はこちらをご覧ください

バージョン管理システム

Perforce MCP のサポート

Perforce との提携により、JetBrains Rider で Perforce MCP サーバーのセットアップと使用が初期状態でサポートされるようになりました。IDE から直接 MCP ツールのインストールプロセスを簡単に実行し、シームレスに有効化できます。

また、この統合により、JetBrains AI Assistant が Perforce ツールとデータにアクセスしてより正確で関連性の高い回答を提供し、開発ワークフローを支援できるようになりました。

Perforce MCP サーバーの構成方法については、こちらをご覧ください。

ゲーム開発

Unity

IL Viewer での Unity コード

IL Viewer ツールウィンドウに IDE ビルドが生成する一時的なアセンブリではなく、Unity が生成して後処理を行ったアセンブリの中間言語(IL)コードが表示されるようになりました。これにより、Unity が実際に使用するものに基づいてコンパイル結果を解析できるようになります。

Unreal Engine

パフォーマンスの改善

Rider 2025.3 では、Unreal Engine のパフォーマンスが大幅に強化されました。 プロジェクトの初期化とアセットのスキャン処理を最適化することで、繰り返し使用されるプロジェクトの読み込み時間が 20% 短縮されました。 アセットのキャッシュが使用するメモリ量が減ったことで IDE 全体のメモリ使用量も少なくなり、大規模な Unreal Engine プロジェクトで作業する際の応答性が改善されました。

Android 向け Unreal Engine モバイル開発

このリリースでは、初期段階の Unreal Engine 向けモバイルデバッグのサポートが導入されました。 コールスタック全体を可視化して Android ビルドをデバッグできるようになりました。

このリリースでは、Android デバイスで UE ビルドのデプロイとデバッグを行う機能も追加されています。

Unreal Engine プロジェクトでの constexpr 式のデバッグ

Rider で重要性がますます増している C++ の constexpr コードをデバッグできるようになりました。 通常の実行時デバッグと同様に constexpr 関数内で実行を一時停止し、変数を検査し、式を評価することができます。 詳細については、こちらのブログ記事をご覧ください。

Solution Explorer の統合

Solution Explorer 内で .sln ファイルから .uproject ファイルに直接切り替えることで、Unreal プロジェクト内をよりスムーズに移動できるようになりました。

Godot

このリリースでは、Rider の Godot エンジンサポートを引き続き拡張しています。 GDScript 言語エンジンがネストしたクラスと列挙型をより正確に処理するようになり、未使用のパラメーターのインスペクションが改良され、型付き辞書構造のサポートが追加されました。

特定のシーン、ツールスクリプト、およびデバイスをデバッグし、デバッグセッションに引数を渡し、GDExtensions テンプレートから新しいプロジェクトを開始することもできます。

Rider 2025.3 は Chickensoft GoDotTest ランナー と連携しており、IDE からフォーカスが離れた際にプロジェクトを自動的に再ビルドして Godot Inspector との同期を維持することができます。

ネイティブコードの操作

非アクティブなプリプロセッサブランチのコードハイライト

Rider 2025.3 は非アクティブなプリプロセッサブランチに対応した包括的な構文ハイライトを提供するため、グレーアウト表示時にもキーワード、マクロ、型、および識別子が言語ロールに従って色付けされます。

Unity、Unreal Engine、および Godot に対応したクラウド補完の提案
2025.3.0.4

Rider が Unity、Unreal Engine、および Godot プロジェクトのシェーダーに対してクラウドによる複数行コード補完を提供するようになりました。 Godot 開発者には GDScript ファイルに対応したクラウド補完候補も提供されます。

この機能はデフォルトで有効になっています。 Settings(設定)/Preferences(環境設定) | Editor(エディター)| General(一般)| Inline Completion(インライン補完)の Enable cloud completion suggestions(クラウド補完の提案を有効化する)オプションで構成できます。

データベース操作

コンソールが実質的にファイルであることを UI に反映する時期が来たと判断し、Rider 2025.3 リリースから「クエリコンソール」という用語を「クエリファイル」に変更しました。 また、ワークフローのさらなる単純化を行い、より見つけやすくし、整合性を高めました。

この変更については、こちらの記事をお読みください。 データベースに関する改善の詳細については、こちらをご覧ください。

可観測性

OpenTelemetry トレースのエクスペリエンス改善

Rider 2025.3 では OpenTelemetry トレースの必要最小限のテーブルビューが変換され、より多くの情報と直感的な方法を利用してトレースに属するすべてのスパンを詳細に調べることができます。 これにより、開発中に IDE から離れることなくアプリケーションの実行時動作をより明確に理解することができます。

その他

動的プログラム解析(DPA)のサポート終了

このリリースの JetBrains Rider から動的プログラム解析(DPA)を単独の機能として提供しなくなりました。 現在、DPA の背後にある一部の解析システムを Monitoring(監視)ツールウィンドウに組み込む作業を進めているところです。この作業は、ワークフローを単純化し、アプリケーションのパフォーマンスの監視と改良を 1 か所で行えるようにするという、より広範な取り組みの一環です。