CLion 2025.1 には、デバッグ、組み込み開発、プロジェクト形式の更新に加えて、CLion Nova 言語エンジンの新機能と改善が導入されています。 また、C/C++ コードで自然言語プロンプトを処理する機能やチャットから直接複数のファイルを編集する機能など、各種の強化された無料の AI Assistant 機能も提供されています。
CLion Nova がプロジェクトに含まれていないヘッダーとソースファイルに対する完全なコード解析とコーディング支援機能を提供するようになりました。 これは、ビルドに含まれていない .cpp ファイルのコードを編集する必要がある場合などに役立ちます。
デバッガーで一時停止中の Qt アプリケーションを調べる際、変数を人間が判読できる形式で表示できるようになりました。 これにより、CLion で Qt フレームワークを使用したクロスプラットフォームアプリケーションの開発とデバッグを行いやすくなっています。
STM32 チップ専用に設計された ST-LINK デバッグサーバーテンプレートを追加しました。 このテンプレートには最も基本的な必須の設定のみが含まれているため、STM32 プロジェクトのデバッグが単純化されます。
west build オプションと Sysbuild のサポート Zephyr プロジェクトに取り組む際に west build コマンドオプションを使用し、Sysbuild を基本のビルドシステムに指定できるようになりました。 これにより、Zephyr プロジェクト(ハードウェアが関係するものも含む)の構成をより柔軟に行えるようになっています。
CLion やその他の JetBrains IDE で、すべての AI Assistant 機能が無料になりました。 一部の機能(無制限のコード補完やローカルモデルのサポートなど)は完全に無制限に使用できますが、その他の機能は制限付きでクレジットベースでアクセスできます。 新しいサブスクリプション体系により、AI Pro および AI Ultimate ティアで必要に応じてスケールアップを簡単に行えるようになっています。
新機能には、チャットからの直接的な複数ファイルの編集や、Claude 3.7 Sonnet、OpenAI GPT-4.1(近日公開予定)、Gemini 2.0 Flash などのクラウドモデルのサポートなどがあります。
CLion Nova がプロジェクトに含まれておらず、ビルドプロセス中に使用されないヘッダーファイルとソースファイルを正しくサポートするようになりました。 そのため、これらのファイルで作業する際に(通常のプロジェクトファイルと同様の)完全なコード解析とコーディング支援機能を使用できます。
たとえば、プロジェクトに含まれていない .cpp ファイルをコードの一部を編集するだけのために開きたいことがあります。 このような作業を、コード整形、入力支援、コード補完といった提供されているすべての基本機能を活用しながら行えるようになりました。
現行の実装ではほとんどのユースケースに対応していますが、一部のエッジケースに対応するためにフィードバックを収集することも予定しています。
Objective-C ソースファイルで作業する際、構文ハイライト、警告、コード補完、提案、および clangd が提供するその他の機能を使用できるようになりました。
このサポートはまだ基本的なものであるため、エディターのスマートキーやリファクタリングなどの一部の機能が動作しない可能性があります。 また、CLion Nova が Objective-C ヘッダーファイルを正しく処理できない可能性があります。 CLion Nova での Objective-C の完全サポートに関心がある方は、CPP-37281 をフォローするか、この課題に投票してください。
以前は CLion Classic のみに提供されていたいくつかの設定、アクション、およびスマートキーが CLion Nova に実装されました。 これらの機能により、CLion Nova での開発がさらに便利になります。 以下にいくつか例を挙げます:
CLion Nova が Bazel プロジェクトでの GoogleTest および Catch2 テストフレームワークの使用をサポートするようになりました。
ユニットテストの基礎と CLion でのテストツールの使用方法に関する詳細は、チュートリアルをご覧ください。
Qt レンダラー(別名: Qt pretty printer、Qt デバッグヘルパー)を使用すると、QString、QList、QByteArray などの Qt 変数を人間が判読できる形式で表示できます。 これにより、Qt フレームワークを使用してビルドされたアプリケーションの開発とデバッグがさらに快適になります。
この機能はデフォルトで有効になっています。 以下のようにして無効にできます。
Qt レンダラーはリモートおよび WSL ツールチェーンには未対応ですので、ご注意ください。
macOS または Linux で作業する際、現在バンドルされているバージョン 19.1.3 の LLDB に加えて、カスタム LLDB を使用できるようになりました。 このため、プロジェクトの要件に最適なバージョンの LLDB を選択できます。
Settings(設定)| Toolchains(ツールチェーン)に移動し、 Debugger(デバッガー)フィールドで Custom LLDB executable(カスタム LLDB 実行可能ファイル)を選択します。 すると、CLion がシステムにインストールされているカスタム LLDB を自動的に検出しようとします。 インストール場所は手動で指定することも可能です。
現在、以下のような制限があります。
OpenCV を使用するコンピュータービジョンまたは ML アプリケーションをデバッグする際には、OpenCV 行列を画像として表示することができます。 CLion 2025.1 ではこの機能を拡張し、cv::Mat m(2, 3, CV_8UC2) などの 2 チャンネル行列を画像として表示できるようにしました。
コード内の OpenCV の 2 チャンネル行列を画像として表示するには、デバッガーの Threads & Variables(スレッドと変数)ペインを選択し、行列に移動して View as image(画像として表示)をクリックします。
.natvis ファイルの場所のカスタマイズ Natvis レンダラーまたは Natvis ビジュアライザーを使用すると、MSVC デバッガーで作業する際に異なるデータ型に対して可視化ルールを定義することができます。 従来の CLion ではプロジェクトディレクトリの .natvis ファイルしかロードできなかったため、特に Git やその他のバージョン管理システムを使用する場合には柔軟性が不十分でした。 このバージョンでは、.natvis のファイルの場所をカスタマイズして指定できるようになりました。
Settings(設定)| Build, Execution, Deployment(ビルド、実行、デプロイ)| Debugger(デバッガー)| Data Views(データビュー)| C/C++ に移動すると、Natvis レンダラーが含まれる別のディレクトリを追加できます。 Natvis ファイルの操作に関する詳細は、ドキュメントをご覧ください。
STM32 プロジェクトをデバッグする際、STM32 チップ専用に設計された ST-LINK デバッグサーバーテンプレートを使用できるようになりました。 このテンプレートには最も基本的な必須の設定のみが含まれているため、構成プロセスが単純化されます。
Settings(設定)| Build, Execution, Deployment(ビルド、実行、デプロイ)| Debugger(デバッガー)| Debug Servers(デバッグサーバー)に移動し、+ をクリックすると ST-LINK テンプレートを選択できます。 その後、デバッグサーバー、デバイス、およびデバッガーのパラメーターを構成してください。
ST-LINK の構成オプションは、以下の場合にのみ機能することに注意してください。
ユーザビリティを改善し、より広範な STM32 チップとプロジェクトにサポートを拡張するため、STM32CubeMX プロジェクトの作成プロセスを更新しました。 CLion は STM32CubeMX ネイティブの方法で CMake ファイルを生成することで、プロジェクトの作成を正式な STM32CubeMX ワークフローとツールチェーンに完全に準拠して行うことができます。
今後も STM32CubeMX New Project(新規プロジェクト)ウィザードを継続的に改善していきますので、フィードバックをぜひお寄せください(CPP-42553)。
Serial Port Monitor プラグインを使用することで、DTR、DSR、RTS、および CTS ハードウェア制御シグナルの表示と管理を行えるようになりました。 これにより、シリアルポートを使用する接続中のデバイス(Arduino や ESP32 など)をさらに細かく制御できるようになっています。
ハードウェア制御シグナルを有効にするには、以下の手順を実施します。
制御オプションとインジケーターが COM ポートのタブに表示されるようになります。
また、モニター出力でタイムスタンプを表示することもできます。これは、メッセージシーケンスを詳細に追跡する場合に役立ちます。
west build オプションと Sysbuild のサポート Zephyr プロジェクトに取り組む際に west build コマンドオプションを使用し、Sysbuild を基本のビルドシステムに指定できるようになりました。 これらの両方の機能により、Zephyr プロジェクト(ハードウェアが関係するものも含む)の構成をより柔軟に行えるようになっています。
Settings(設定)| Build, Execution, Deployment(ビルド、実行、デプロイ)| Embedded Development(組み込み開発)| West | Advanced Settings(高度な設定)を使用すると、west build コマンドに追加のパラメーター(カスタムボードへのパスや基盤となるビルドツールのオプションなど)を渡すことができます。
Sysbuild は、複数の SoC(システムオンチップ)や複数の CPU コアを搭載した SoC のボード用に複数のイメージをビルドする機能を提供します。 Sysbuild は、上記の Advanced Settings(高度な設定)セクションで必要な他のオプションとともに --sysbuild を渡すことで有効化できます。
バンドルの CMake バージョンが 3.31.4 に更新され、CMake Presets バージョン 10 がサポートされるようになりました。 プリセットは JSON ファイル形式で保存され、CMake プロジェクトの共通の構成とビルドオプションを指定し、他のユーザーと共有する場合に役立ちます。
CLion やその他の JetBrains IDE のすべての AI Assistant 機能が無料になり、AI を活用した開発がより親しみやすく効率的なものになりました。 一部の機能(無制限のコード補完やローカルモデルのサポートなど)は完全に無制限に使用できますが、その他の機能は制限付きでクレジットベースでアクセスできます。 新しいサブスクリプション体系により、AI Pro および AI Ultimate ティアで必要に応じてスケールアップを簡単に行えるようになっています。
他にも以下のような機能強化によって生産性が向上し、定型タスクが少なくなります。